伊沢拓司「AQLは共助の仕組みが魅力」~AQL2021全国大会レポート⑤~

 現在、中高生を中心に膨張期を迎えているクイズ文化に、最も大きい影響力を与えてきたプレーヤーが伊沢拓司だ。タレントやQuizKnock代表の活動を続けるなか、今大会はジュニアの部や、準決勝、決勝の司会を担当した。午前中は一般の部で「玉Q」の一員として、午後はジュニアの部の司会を長時間にわたって続けた。今年から、QuizKnockはAQLの協賛として名を連ねている。その理由や、プレーヤーとしても、たゆまぬ研鑽を続けている近況について聞いた。

福岡の修猷館チーム代表にインタビューをする伊沢さん。
福岡の修猷館チーム代表にインタビューをする伊沢さん。

―AQLの魅力は何でしょうか。

 出題者という立場を、全員が経験することです。みんなが押せるし、みんなが出せる。「共助」の仕組みがあるのが魅力です。

 

―司会をしていて感じることは。

 AQLを見ていて胸が熱くなるのは声がけ。各チーム、得点状況に応じて、ペースのチェンジするために「ここは押そう、ここは押さないで」の指示が飛ぶ。そういう熱さが、特に高校生世代にある。彼らは社会人に比べて感情の起伏が激しくて、他のクイズ大会では見られない部分です。

 

―テレビクイズとの違いは。

  テレビクイズは(出題される)問題数が少なくなりがちです。(多くの問題を使う)AQLは皆の力が出ないと勝てない。5枠あるので、5つの枠にいる全員が活躍する必要がある。普段(クイズが)得意ではないような子が正解したときの、チームの笑顔というのは、本当に胸が熱くなります。知らない子でも応援したくなります。

出場者としては「玉Q」で挑んだ伊沢さん。玉QはAリーグ3位と、惜しくも準決勝進出を逃す結果となった。
出場者としては「玉Q」で挑んだ伊沢さん。玉QはAリーグ3位と、惜しくも準決勝進出を逃す結果となった。

 

―伊沢さんはプレーヤーとしても挑戦しています。

 僕自身も毎年のように(一般の部で所属サークル「玉Q」から)挑戦している。全国から強い人が集まる大会で、普段は地元から動かないような人が、チームを組むという理由で東京に出てきてくるんです。「うわ、地方にはこんなに強い人がいるのか!」という驚きもあるし、地域同士の交流もある。僕もワクワクする。「こんなに全国にクイズの火があるのか」というのを再確認させてくれる大会です。

 

―クイズの盛り上がりについて、都市部への集中を感じる部分はありますか。

 都市に寄っていくのがクイズの特徴だけれど、そうではないところにも、いろいろなプレーヤーがいます。そして、そういう人は、決して(クイズが)弱い人ではありません。地元ならではの知識や、自分で蓄えた知識を武器に戦います。特に社会人プレーヤーは、いろんなところに、いろんな強い人がいます。

 高校でみると、どうしても都会に(クイズ研、クイズ部がある学校が)多いですが、クイズは本来、ボタンと問題があれば、どこでも楽しめるのがいいところ。グラウンドもいないし、教室があればいい。本来、どこでもできます。

AQLをすることで、全国的に(クイズ研、クイズ部を作ろうという)機運が高まると思っています。賞状などで表彰されることで、クイズ研究会に昇格したとか、同好会が部になったというケースもあります。全国のクイズをやりたいと思っている子がこの大会を経由して、各地で火をともしてくれるとうれしいです。

 

準決勝第9試合を前に、謎の寝そべり?をされる伊沢さん。(どうしてこうなったかは、動画で確認を!!!)
準決勝第9試合を前に、謎の寝そべり?をされる伊沢さん。(どうしてこうなったかは、動画で確認を!!!)

―大会の継続性について。

 クイズの大会があるというのは、僕にとってもクイズを頑張るきっかけになりました。僕も先輩が活躍している姿を見て、「ここに立ちたい、一緒に戦いたい」と思いました。規模の大きいAQLで、1年から3年まで参加したら、1年生が「自分もここを目指そう」と思って頑張れます。モチベーションになるシステムであると思います。この大会が続くことで、2年目、3年目に、またノウハウを携えてまた来てくれます。AQLが続くことは、全国の中学、高校年代の子たちには大きな糧になると思っています。

 

―QuizKnockの協賛の理由は。

 やりたかったのはクイズ界への恩返し。クイズノックは教育企業だけど、クイズというツールを使って学びの楽しさを広げていくということをしています。活動のなかで、クイズの文脈をすごく借りています。動画ネタにしても、クイズ界の人が発明してくれたものを使わせてもらっています。なので、クイズの世界に借りがあるんです。これをどのような形で返すかを考えたときに、われわれを支えてくれた文化に対して、恩返しをしようという思いがありました。

 そしてクイズが好きな人が増えてくれると、クイズノックが好きな人も増えてくれると思います。一緒に歩んでいこうという考え方で、クイズ文化のためになると思っています。

(記事・三木智隆)

 

取材後記

 取材を受けていただいた皆さま、ありがとうございました。あの舞台に集まっていた数百人、地方大会に参加した全ての皆さまに、クイズとの関わりがあり、それぞれのストーリーが存在していたと思います。多くの人の声をうかがいたかったのですが、時間の関係上、特定のプレーヤーや参加者のみとなってしまいました。私は「人」に興味があって、記者の仕事をしています。試合の結果よりも、努力の過程や葛藤に触れることが大好きです。今回はクイズについての思考を、さまざまなプレーヤーに聞くことができました。素晴らしい機会を与えていただいた市川大会長に感謝いたします。

 伊沢さんも言及していますが、AQLの最大の魅力は「声掛け」にあると感じました。一般の部でも、ジュニアの部でも、いろんな種類の声掛けがあり、誤答した仲間を励ます姿、正解を称賛する姿は、チームスポーツそのものでした。

 また、この大会はAQLサポーターズの他、大量のプレイングスタッフにも支えられています。複数部屋開催の複雑なオペレーションを、コミュニケーションツールを用いて、円滑に進めていく姿は、ギブアンドテイクを何より大切にしてきたクイズ界の職人芸と言えるものでした。アマチュアクイズ界を支える共助精神を誇らしく思います。

 私も私なりの形で、クイズと関わっていき、微々たる力ですが、自分なりの恩返しをしていきたいと思っています。今回はありがとうございました。

三木智隆