『第3回クイズ作問甲子園』審査委員紹介

『第4回夏のセンバツAQL・問題作成部門(通称:『第3回クイズ作問甲子園』)』にて、問題を審査する審査委員を紹介します(五十音順)。

審査委員選出に際しては、AQLの各地域代表並びに役員から推薦を踏まえ「第3回夏のセンバツ実行委員会」が下記基準で選出・依頼し、最終的にAQL会長の承認を経て決定しております。

 

二次審査委員:「AQL運営への多大な貢献があり、かつ問題作成面や初心者に向けたクイズ普及において活躍している方。もしくは「言葉」の分野で活躍されている方」を、バランスよく選出する

一次審査委員:二次審査委員で一次も引き受けてくださった方に加え、「AQLに関わった高校卒業直後の大学生1・2年生で、問題作成面での活躍が見られる方」を中心に依頼する

 

なお、審査委員各人の紹介文は実行委員長で執筆し、審査基準(あるならば任意で「理想とする問題群」も挙げていただきました)は各審査委員に執筆していただきました。

ベースとなる審査基準はこちら

*各人の審査基準はあくまで各審査委員の考えを元に執筆したものであり、全てが「AQL実行委員会として推奨する正しい問題作成方法」というわけではありません。また、夏のセンバツAQL実行委員として、内容を校閲しておりません。

 

 

二次審査委員

片岡桂太郎 近藤仁美 高橋太郎 鶴崎修功 徳久倫康

中林もも 能勢一幸 野田修平 三木智隆 森慎太郎 

 

一次審査委員

Aコース 徳久倫康 中林もも 飯星洸一郎

Bコース 近藤仁美 鶴崎修功 贄祐太

Cコース 能勢一幸 三木智隆 中山拓海

 

第4回夏のセンバツ実行委員会事務局長

栗林祐太

 

二次審査委員

片岡桂太郎

AQLでは全国大会の裏方スタッフを複数年にわたり務めるなど開催に大きく貢献。プレイヤーとしては学生No1決定戦『abc』の初代王者をはじめ数々のクイズ大会で優勝、AQLでもAKQJTのエースとして全国ベスト4進出経験がある。また主催に関わった『ロブスターシリーズ』『Qシリーズ』などのオープン大会における独自の問題傾向にはファンも多い。

【審査基準】

現状では以下の視点で採点するつもりです。

 

 

「Smart(企画者として)」今回の問題文を大会で使用することを考えたとき、別解・読み方・正誤基準などを網羅している

 

「Diversity」多様な問題を採用していること(ここでの「多様性」は問題群を編むときの醍醐味の一つかと…!)

「Guaranteed(回答者として)」心理的安全性をもってクイズをプレーできること(問題の正確性が高いこと、誤答をむやみに誘わないこと)

 

 

ただ、前回のレベルの高さを考えると、ここらへんで大きな差がつかないのでは、とも思っております。

いずれにせよ、皆様の力作を拝見するのを楽しみにしております。

 

近藤仁美

JQA/国際クイズ連盟日本支部代表として、AQLと共にクイズ普及に取り組んでいる。またプロのクイズ作家として、『高校生クイズ』『クイズ!あなたは小学5年生より賢いの?』等のテレビ番組の他、ウェブメディア「ねとらぼ」の教養記事連載、ディズニーチャンネル『ミラキュラス』リアルイベントなどを担当する。

【審査基準】

私の主な審査基準は、これまでと変わらず「人のことを考えられているか」です。

たとえば、解く人がすんなりと理解できる問題文になっているか、いたずらに人を不快にさせない題材選びができているか、周りだけでなく作問者本人の楽しみも置いてけぼりにしていないか、などがこれにあたります。

また、いままであまり出題されてこなかった分野での作問も歓迎します。出題歴はなくても出題意義が十分にあるものへの気づきや、先例がない状況で素材のどこを切り取ってクイズにするかという勘所は、作者の力量が大きく問われる部分です。

皆さんの想いのこもった、AQLという場にふさわしい問題を期待します。

  

高橋太郎

AQL事前番組や全国大会の生放送において、複数回司会役を担当。また「ソフロレリア」名義でWebメディア『QuizKnock』のライターとしても活躍した。

【審査基準】

審査員を務める高橋太郎です。よろしくお願いいたします。

私は以下の2点を審査の大きな指針といたします。

 

・第三者に読まれることが意識されているか

今回作成していただく問題は、審査員による査読の対象であり、また、問題作成チーム以外による出題を前提とするものです。したがって、第三者に提出するにふさわしい文書に仕上げることが肝要であると考えます。

 

・問わんとする題材の面白さが伝わるか

何を問うかは自由であるうえに、同じ言葉が答えになるクイズでも、その問い方は十人十色です。作成者の色を感じられることが問題持ち寄りの醍醐味と考えているので、問わんとする題材の面白さを伝えてくれるようなクイズを評価する方針です。

 

ぜひチームで協力して、問題作成から提出までのプロセスを楽しんで行っていただければと思います。珠玉の問題群をお待ちしています!

 

鶴崎修功

AQL2020、2021で複数回ジュニア向け問読み・進行を実施、特にAQL2021では初の日経ホール生放送にて司会や問読みを担当した。TBS系列のテレビ番組『東大王』の初代東大王や、Webメディア『QuizKnock』のメンバーとして現在も活躍する。

【審査基準】

早押しクイズは出題する人と答える人がいて成り立ちます。出題側がどれだけ答える人のことを考えられるか、答える人のことを楽しませられるかが大きな問題と私は考えます。一方で、出すクイズによって出題側の人間のかたちがあらわれてくるというのも魅力だと思っています。なので、私の審査基準を簡単にいうと「みなさんのクイズで、参加者が楽しめそうかどうか」です。

ただし実際のところ、今回の私は参加者ではなく審査員なので、楽しませられそうかどうかを横から勝手に評価するということになります。

参加者が勝負して納得できるかどうか、参加者が楽しい気持ちになって勝負を終われるかどうか、そして自分たちは本当にこの問題を出したいのか、そのようなことをおもって問題を作ってください。

基本的なこととしては、誤解を生む文、ミスのある文、裏取りの甘い文などではあまり楽しめないと考えます。一方、発展的な部分で「このような作り方がいい!」といま具体的にいうのは、審査員の立場としては少し難しいです。

私が何を考えて問題を作るか語ることはできますが、AQLがそのような問題であふれてほしいと思っているわけではありません。

楽しませるといっても、参加者におもねるような問題がみたいわけではありません。もちろん、審査員におもねる必要はもっとありません。

簡単な問題や押しやすい問題ばかりにする必要はありませんし、歯ごたえばかりがほしいわけでもありません。

「出題側の人間のかたちがあらわれてくるというのも魅力」という言葉と矛盾すると思われるかもしれませんが、出題側の人間性が見えるほどいいというわけでも、透明なほどいいというわけでもありません。

むしろいろいろと考えてみて、1問1問を、そして42問のセットを練り上げることが大事だと考えます。

最後にいうべきこととしては、まずは審査よりも、出題者・参加者としてAQLをよく楽しむことを目指してください。その上で、みなさんの問題を楽しみにお待ちしています。

 

私は昨年も審査を行いました。参考に、総評に書いた私の審査方法を記しておきます。

今年も同じ方法で審査するかはまだ決めていませんが、似たような方法になる可能性は高いです。

審査方法以外の私の感想コメントはこのページで見られます。審査委員として、審査する前に私の思想を具体的に伝えるのはそんなによくない気がしていますが、どうせ公開されているので、知りたい方はリンク先を見てください。

以下が昨年私が使った審査方法です。

 

まず、42問の各問題を、読んだときの自分の感想に応じて、次のように10点満点で評価しました。

・問題に間違い・納得できない点がある→4点以下、基本的に4点

・ギリギリセーフだなと思った→5点

・まあいいんじゃないかなと思った→6点(ここまでは自分なら出さないかもしれないという感触です)

・悪くないね、出してもいいねと思った→7点

・いいじゃん!と思った→8点

・かなり好き!と思った→9点(レア)

・ベタ褒め!→10点

10点は出しませんでした。9点もほとんどなく、大体の問題は6点~8点におさめるようにしました。

その後、全体的な評価として次の項目を設けました。

・かぶり、偏りが目立つ→-20~0まで5点刻み

・難易度が難しすぎる・易しすぎる→-20~0まで5点刻み

・配置がよく考えられている、工夫がある→-20~+20まで5点刻み

・このセットで勝負すると私は楽しい→-20~+20まで5点刻み

・このセットで勝負して私は納得できる→-30~+30まで5点刻み

最後に、正当とは思われない理由で提出が遅れた学校は-5点しました。

 

徳久倫康

AQLでは2018年度の東京東部リーグ代表を務め、AQL以外でも数多くのアマチュアクイズ大会において問題監修や問題作成を担当。また「競技クイズ界最強」と呼ばれ、ここ数年のクイズオープン大会での勝利数1位を記録し続けている。著書に『クイズ用語辞典』(共著)。

【審査基準】

審査をお引き受けするのは3回目になりますが、基準は過去2回から変わりありません。多様な問題に出会えることを楽しみにしています。

 

(以下、第1回、第2回に提示した基準と同文です。)

みなさんにご用意いただくのは、AQLという団体戦の大会で、早押しクイズとして実際に使用する問題です。ですので、わたしの採点基準はただひとつ、「いま、この大会で出すのに適しているか」だけです。

 

みなさんが問題を届ける先は、ほかのチームの参加者であり、われわれ審査員ではありません。こんなことは百も承知でしょうが、決してこちら側を向かないでください。この企画はあくまでプラスアルファであるべきで、これによってAQLの競技性がゆがんでは元も子もないのです。

 

ほかのチームの顔色をうかがえというわけでも、無理に難易度や傾向を合わせろというわけでもありません。みなさんが信じる、「いま、AQLで出すべき問題たち」を出しましょう。

 

もちろん、問題は責任を持って拝見します。でも、本当に自信を持って送り出せる問題群であれば、実際に押し手に楽しんでもらえていれば、審査結果なんて取るに足らないものです。外野がなんか言ってるな、くらいに聞き流してください。

 

中林もも

AQLでは企業渉外担当として日本経済新聞社様など企業との交渉に従事。クイズ歴は審査員の中では最も浅いが、『LockOut通常大会優勝』など、近年勢いあるクイズプレイヤーの一人として知られている。『新世紀エヴァンゲリオン劇場版・序』の英語監修をはじめ、アニメ・ゲーム業界を中心に翻訳・英語監修・脚本など幅広く活躍している。

【審査基準】

私は日頃から言葉に関わる仕事をしておりますので、以下のような点を重視します。

 

①助詞の使い方や、主語と述語の対応に間違いがないこと

②句読点が適切に用いられていること

③語順がよく考慮されており、不要なミスリードが発生しないこと

 

また、実際に出題される場合を念頭に、問題を出す順番や並びも評価の対象とします。

 

たとえば、40問全体でジャンルのばらつきが適切でも、特定のジャンルの問題が序盤に偏っていた場合、その分野を得点源にしているチームが有利になる、といった形で局面に影響が生じます。

 

必ずしも全問使い切るわけではないため、特に後半はその問題で決着がつくかもしれない、ということを意識して選んで頂ければと思います。

 

能勢一幸

AQLでは設立当時から埼玉リーグにて教育委員会後援取得活動に尽力。プレイヤーとしては『第15回アメリカ横断ウルトラクイズ』で優勝したレジェンド的存在。また埼玉県職員として「埼玉クイズ王決定戦」の監修なども行っている。

【審査基準】

審査委員の中で最年長の立場として、昭和時代のTVクイズからオープン大会の黎明期、そして一問一問が洗練された現在まで、クイズの歴史を見て触れてきました。みなさんの渾身の問題群の中から「まだこんな視点があったのか!」と感じさせてくれたり、結果的に私にとっては「懐かしい」と感じさせてくれるものがあったりしたら高評価を与えたいと思います。

また、埼玉県のローカルイベント「埼玉クイズ王決定戦」では問題監修として約10年間、埼玉県を色々な角度からクイズ問題という形で発信し続けてきました。そこでは初めて早押し機に触れる方も多く、いかにボタンを押して答えてもらえるかということに知恵を絞ってきましたので、今回の問題群で、そういった「様々な参加者への正解の可能性を高める配慮」をより強く感じることができたところには高評価を与えたいと思います。

一方で、ジャンルの偏りには「なぜこの配列?」という疑問の感情が強くならざるをえません。異なったジャンルでも出題内容がそれぞれに近い地域のことだったり、同じような年代のものが重なっていると低い評価となってしまいます。

また、回を重ねることで各参加者の問題作成能力が格段に上がっていることから、見慣れた問題の割合が高いと印象が薄くなり、どうしても高評価にはつながらないでしょう。

そのような点をご注意いただいたうえで、みなさんの「クイズ愛」を感じながら採点に取り組みたいと思っています。

 

野田修平

現在、AQL幹事長として大会全体の運営を担う。ネットクイズチャンネル「クイズLIVEチャンネル」の『LOCK OUT!』『でないクイズ』『AQL全国大会・一般の部決勝』などの出題担当、『99人の壁』問題スタッフなど、クイズ作家として活躍中。また2002年に主催したオープン大会『?(デマンドシグノ)』は問題にこだわるコンセプトのもと開催され、大きなインパクトを残した。

【審査基準】

クイズの作り方、良い問題とは何かという問いに決まった正解はありません。

人によって良い問題と感じるものはそれぞれです。

ただ、悪い問題とは何かと問われれば、ある程度共通すると思います。

たとえば事実が間違っている問題、ミスリードを生む問題、場にふさわしくない問題などです。

私が審査する際には加点要素より減点要素を重視するつもりでいますので、

できるだけ「そつがない」問題を揃えていただきたいと思います。

 

また、ウェブ番組『LOCK OUT!』で問題読みと正誤判定を担当している関係上、

「手渡されて読みやすい・判定しやすい原稿か」という点も重視したいと思っています。

読み方が特殊な漢字や外国語にはフリガナを振ってほしいし、

耳で聞いてすぐに意味が取れないような難しい語彙、同音異義語などは避けてほしいです。

正誤判定基準の欄も、ある程度審査対象として見ます。

闇雲に別解を挙げるより、考え得る解答を過不足なくカバーしていると嬉しいです。

 

ともかくも、「解答者のため」「問読み・正誤判定を行う第三者のため」を

しっかり意識して問題を作ってもらえれば、おのずと審査員の評価も上がることでしょう。

審査員のことを特に意識する必要はありません。

審査員のために意識してほしいことは一点だけ、「〆切を守る」ことだけです。

よろしくお願いします。

 

三木智隆

1999年から25年近く続く競技クイズ大会『勝抜杯』の主催者であり、QuizKnock「12時間クイズ」にも3年間、問題提供を行った。2023年4月に、自らが企画発案者となった『クイズ用語辞典』(朝日新聞出版)を田中健一、徳久倫康、石野将樹とともに上梓。2022年秋には、主に社会人初心者向けのクイズのトレーニングジム「QUIZBASE」を開講するなど、早押しクイズを軸に、クイズの普及活動を行っている。本職はスポーツ記者。

【審査基準】

 第1回から3年連続で審査員を拝命いたしました。今春、発売となった『クイズ用語辞典』にも「作問甲子園」の項目を掲載しています。答えるだけでなく作ることも、クイズの大きな魅力です。「作問甲子園」が中高生のクイズ文化の普及につながって欲しいと願っています。

 

私が審査で重点を置くポイントは以下です。重要な順に記載します。

 

①客観的な事実に基づき、正確に出題しているかどうか。

 クイズにとって、最も大事なことだと考えています。答えを一つに絞れる問題文にしてください。主観要素を交えた問題文も面白みはあると思いますが、AQLで多くの解答者に出題するという点では、適切ではないと考えます。主に若い世代の方が作る問題に散見される「~が印象的な」「~が目を引く」といった表現が今一度、客観的な視点に立っているかどうか、サークルや部の仲間とディスカッションしてみてください。

 

②クイズの世界の知名度ではなく、世の中で一般的な内容を問えているか。

 クイズ界の中で有名でも、世の中でほぼ知られていないような事柄の出題に対して、高い点数は与えられません。皆さんは普段、10代の同世代同士で出題、解答をしていると想像しますが、老若男女、さまざまな属性な方を意識してみてください。例えば、90年代に話題となった芸能・スポーツなどは、皆さんにとって身近ではないでしょう。詳しくないジャンルは家族の方に聞いてみると、知名度を推し量れるかもしれません。出題ジャンルや素材をなるべく広げる意識を、心がけてください。

 

③クイズ的な文法ではなく、自然な日本語として問題文を構成できているかどうか。

 ニュースで耳にするような一般的な言い回しを心がけてください。たとえば、「その初代所長を●●が務めた~」「鉄にこれをメッキしたものはブリキと呼ばれる~」といった、指示代名詞が文頭に入る問題などは自然な日本語ではないと判断しています。指示代名詞は通常、前に出た事柄を指すためです。また、同音異義語を連想するような言葉、難解な熟語は、耳で聞いて一度で分かるような表現に換えられないか、工夫してみてください。テキストを目で見て理解できることと、耳で聞いて理解することは異なります。

 

④AQLルールで勝敗をつける上で、適切な問題群かどうか。

 スルーが続くような問題、ミスリードを誘いかねない問題、ジャンルや切り口が偏り過ぎている問題の評価は低くなります。新作だけにこだわらず、スピードを競うベタ問題が少なからず入っていることも、AQLルールに即していると判断しています。競技面も考慮し、バランスのよい出題を目指してください。

 

⑤着眼点や前振りを工夫し、問題文にオリジナリティーを打ち出せているか。

 ①~④を踏まえた上で、初めて⑤に挑戦してください。独創的かつ奇をてらっていないクイズを期待しています。機械的な問題の羅列ではなく、耳で聞いたときに問題作成者の顔や素性が思い浮かぶような問題が、一定の割合で入っていることが理想です。

 

⑥世間の流行、ニュースを題材に取り入れているかどうか。

 単純な時事問題だけではなく、時事的な要素を問題文に散りばめているクイズは高く評価します。この要素は私の好みが特に大きい部分です。

 

 みなさんの力作をお待ちしています!

  

 森慎太郎

「QuizKnock」の一員としてクイズ制作に携わる中、クイズ大会「High School Quiz Battle WHAT」では問題チーフを担当し、様々な形式の出題で参加した学生に影響を与えている。

プレイヤーとしては、洛北高校時代の2014年に「高校生クイズ」で全国制覇。AQLでは2019年に「TQC東東京」の一員として、鶴崎修功らと共に全国制覇を経験している。

【審査基準】

 どうも、森です。わたしはみなさんの問題を審査させていただくうえで、昨年に引き続き、主に次の3つの観点を重視いたします。

 

 ① 「事実に基づいて書かれた日本語の文」として適切であるか。

 ② 「読み上げで出題される早押しクイズの問題文」として適切であるか。

 ③ クイズとして「良い」か。

 

 ①の観点は、クイズの問題文としてどうという以前に、普通の文としてどうかということを考えるためのものです。①の観点で注意すべきと考えるトピックは主に2点です。1点目は、言葉遣いが日本語の文として適切な範囲のものであるか。言葉の表記、てにをはや係り受け、コロケーションなどが日本語としておかしいものでないか、注視します。2点目は、文の内容が正しいか。全ての問題をわたしの方で追加で裏取りすることは現実的ではありませんが、読んでいて気づいたものや怪しいと思ったものについては積極的にソースに当たるようにします。その際、ソースの信憑性も評価の対象とします。また、内容の正しさについて、「間違ったことを書いている」以外にも「間違ったことは書いていないが、事実とは別の印象で受け取ってしまう」ような場合は評価が下がる要因となりえますので注意してください。

 ②の観点は、クイズの問題文、特に読み上げで出題される早押しクイズの問題文としてどうかということを考えるためのものです。②の観点で注意すべきと考えるトピックは主に2点です。1点目は、問題文から導かれる答えが1つに絞れているか。(AQLの)早押しクイズは「答えは問題文から1つに絞ることができる」という前提で行われるため、この前提にそぐわない問題は評価が下がることになります。ただしこれは、「〜は何と何でしょう?という形で2つのものを答えさせる問題」「英語での別解が考えられる問題」「説明を問うているので答え方に幅が存在する問題」などを否定するものではありません。あくまで「想定しているものの他に、別のものも正解として扱いうる問題」になっていないか、注意してくださいという意味です。2点目は、問題文を前から耳で聞いて不都合がないか。(AQLの)早押しクイズには、問題が前から順番に読み上げられ、それを耳で聞き取って答えを導く、という特徴があります。(そうでないクイズ、たとえば「問題文」に相当する画像の全貌を一気に見ることになるビジュアルクイズや、耳で聞き取るのではなく目で問題文を読み取る「みんなで早押しクイズ」のクイズと比較するとわかりやすいかもしれません。)意図しないミスリードや誤解、それらに伴う誤答の中には、出題方法・解答プロセスにおけるこの特徴について問題作成時に考慮することで防げるものが一定数存在すると考えます。わたしは防げるエラーはなるべく防ぐ方がよいと考えているため、問題文がこの出題方法・解答プロセスに適した形になっているか、注視します。考慮することのできるポイントの具体的な例としては、耳で聞いて変換するのが難しい熟語をうまく処理しているか、前半部分だけを聞いた人が他の答えに強く誘導されないか、問題文を口に出して読んだときに読みにくくないか、などを挙げておきます。

 ③の観点は、①や②では言い表せないようなポイントについて考えるためのものです。①②の観点でカバーできないあらゆるトピックが対象となるでしょう。この項で無数のトピックを個別に・網羅的に説明することは難しいため、③の観点については「クイズにおける良さ」とは何か、みなさん自身で考え、問題の形で表現していただいたものを、わたしの考えでひとつひとつ審査するということになります。 ここで1点知っておいていただきたいのは、「良さ」にはさまざまな流派や考えがありうるということです。たとえば、制服を着崩すのが「良さ」として流行っているとき、「良い」着こなしをするにはそれに倣うしかないかというと、そんなことはありません。おしゃれについて熟考した結果、あえて制服をしっかり着るというポジションをとることもできるし、「良さ」を優先するために制服を捨てることも(理屈の上では)できるでしょう。ですから、まずは自分と仲間たちの目指す「クイズにおける良さ」とは何かを、深く考えてみることをおすすめします。もちろんこのクイズ作問甲子園という場においては、最終的に「AQLという場に相応しい形で良さを発揮できているか」という視点で審査をすることになるため、すべての「良さ」を一律に高く評価することは難しいと思われるのですが、「クイズにおける良さ」について考える経験は、ここでの結果以上に大きなものをみなさんにもたらしてくれるはずです。

 

 今回、以上の3つの観点の間に優先度の序列を設けます。最も上位に置かれ、まず最初に満たさなければならない観点は①です。その次が②で、最後に満たすべきものが③です。ある観点に一定以上の瑕疵がある場合、その観点よりも優先度の低い観点については評価を行いません。たとえば、③の観点のみを見れば高く評価できる問題であっても、②の観点に一定以上の瑕疵がある場合は①と②の観点のみを評価することになる、ということです。ですから、③の観点に自信のある問題であればあるほど、まずは①や②の観点に立ち返ってエラーがないか念入りに確認することをおすすめします。また、評価の方式について、①と②の観点は減点方式に近い形での評価となり、③の観点は加点方式に近い形での評価となることを付け加えておきます。

 

 ここまでで、1問単位の審査について述べました。最終的な審査としては以上の1問単位の審査をベースに、42問のセットとしての完成度を見ることになります。その際は、ジャンルバランスや表記の統一、ルビが適切に振られているか、全体のテイストなども勘案することになりますので注意してください。

 

 ここまで読んでくださってありがとうございました。この文章をここまで読みこなせたあなたの力作を、楽しみにしています。誠心誠意、審査させていただきます。

 

 

一次審査委員

 

飯星洸一郎

立命館大学に在籍しながら基本問題から難問、果てはジャンル別まで、多様なクイズへ積極的に関与する実力派プレイヤー。中学時代から世代を引っ張る存在として活躍し、「abc the21st」では大学1年生(当時)で2人のみの1st Round通過を果たすなどの実績を残している。

【審査基準】 この度「作問甲子園」審査員になりました飯星です。

私は審査基準として以下の3点を重要視します。

①「問題群としての面白さ」


一口に「面白さ」と言っても多種多様の基準が存在します。そのどれもが否定されるべきではありませんが、より普遍的な興味深さ、面白さといったものは存在すると考えます。

私は提出された問題が妥当な切り口であるか、また、その題材について問題を読んだり聞いたりした人に新たな知識、興味深いという思いを抱かせることができるかどうかという点をもってこの観点の審査にかえたいと思います。

どんな問題も、それを含む問題群の構成が適切であれば真価を発揮するものです。皆さんの渾身の一問が最大限輝ける問題群を構築してみてください。


②「AQLのルールに合致した問題群であるか」


どの学校も多様なアイデアや独創性の詰まった渾身の問題群を出題すると思います。しかし、これは「AQLの」「作問甲子園」です。皆さんが提出した問題群がAQLルールで押されるということを忘れないでください。

AQLはそのルールの性質上誤答が重い大会になっています。そのため、独創的なアイデア溢れる問題であっても、ミスリードを誘発したり難易度が高すぎる/低すぎる問題であれば適切な出題とは言い難いでしょう。押す人に対する思いやりを持った問題群を構築してみてください。


③「問題文の表現が適切であるか」


意外と手が回らないかもしれませんが、このことをないがしろにしてはいけません。いくら着眼点が良い問題といえども、文法構造が正しくなければノイズになってしまい、解答に支障が出る恐れがあります。

大前提ではありますが、提出する42問は「読まれる」ためにある問題群です。また、皆さんの提出する問題を問読みするのは皆さん自身ではなく他のサークルの方々です。参加者にも出題側の方々にも滞りの無いクイズの場を提供するために、適切な表現を持った問題群を構築してみてください。


ルールにふさわしい問題群を揃えながら面白さを損ねないこと、この二つを両立することはかなりの技術を要すると思いますが、皆さんならこの難題を乗り越えてくれると信じています。

皆さんのクイズ愛が詰まった渾身の42問を楽しみにしています!

 

贄祐太

筑波大学附属高校時代から、サプライヤーとして同期と運営を行った「KQA杯」「皇帝杯」などで精力的に活動を行った。現在は東京大学に在籍中。

【審査基準】

 この度審査員を務める贄(にえ)と申します。高校時代はAQLに参加することが叶わなかったので、このような形で関われることに感謝しています。今回の審査をするにあたり、私が重要視するのは以下の3点です。

①各方面への配慮が感じられるか

 ここで言う「配慮」は、ふりがなをふったり、別解を調べておいたりといった「問読み・正誤判定への配慮」や、言葉同士の関係が分かりやすく、ミスリードを生みにくい文章にするといった「プレイヤーへの配慮」などを指します。


②情報が正しく、聞いて理解しやすい問題文であるか

 クイズの問題文に正確性が必要なことは言うまでもありません。一方で、正確性を気にするあまり専門性の高い単語を並べてもその題材の面白さは伝わりません。正確性を保ちつつ、分かりやすい言葉遣いがなされた「題材の面白さが多くの人に伝わる問題」を期待します。


③問題をセットで見た時に「丁度良い」か

 一問、一問に力を入れることは非常に大切ですが、全体のバランスを見ることも大切です。ルールの厳しさを考えれば凝ったふりが多すぎる問題群はプレイヤーにとって厳しすぎるでしょうし、逆に安直なふりばかりでは面白味に欠けるでしょう。「重すぎず、軽すぎず」「難しすぎず、簡単すぎず」といった「丁度良さ」を評価したいと思います。


 色々書きましたが、私の言うことなどさほど気にする必要もないでしょう。皆さんが思う理想の問題を目指して下さい。渾身の問題をお待ちしています。

 

中山拓海

長文難問学生No.1決定戦「PERSON OF THE YEAR 2022」の優勝に代表される、学生きっての難問派プレイヤー。

AQLでは2018年に九州王者として全国大会に進出し、全国の強豪と代々木の地で鎬を削った。

【審査基準】

皆様初めまして、中山と申します。本大会の問題を審査するにあたり、私が意識する点は以下の通りです。

 

①嘘のない問題を、正しい日本語で作れているか

言うまでもない大前提ではありますが、クイズの問題文において情報・文法の正確さは必須です。

 

②出題する事象

「クイズ初心者を含む中高生に出題する」という前提ももちろん大事です。ですがそれにとらわれて、卑近な、当たり前過ぎる事象を当たり前のフリで出題する問題ばかりでは面白さに欠けます。

 

③フリについて

新しい切り口を意識するあまり、変な表現や主観をフリにするようではいけません。固有名詞を曖昧に隠しただけのフリなどはもってのほかです。

 

以上はあくまで私個人の思想です。欲を言えばこれらにもとらわれることのない、妥当性と面白さを天秤にかけた至高の問題群をお待ちしています。